目次
- はじめに
- (↓壁取付の動画や記事のホームページも作ってみました)
- 最初に・・・なぜ壁にきちんと固定することが必要なのかを考える
- なぜ自宅でいるときに地震でケガをするのでしょうか。
- 家具の固定は必要なのです。
- まず壁の内部構造を知る
- ここでは木造軸組工法を説明
- つまり、建物を火事から守るため(法令を守るため)に石膏ボードの壁が必要なわけです。
- 胴縁(どうぶち)があるかないか
- 壁の中をイメージする
- 壁の内部は外から見ても分からないという当たり前の事実
- 思っているより長いビスが必要になる
はじめに
ちょっと前に近所の知り合いの方から、家の壁に棚を取り付けるので固定方法について詳しく教えてほしいと聞かれたことがあります。
その人も、ネットでいろいろと調べたそうなのですが、きちんとわからなかったと。
なるほど、こういうことでみんな困っているのだなと思い、試しにネットでいろいろと調べてみましたが、私はあまり納得できるものが見つけられませんでした。
そういうわけで、いろんな建設現場での知識と経験を踏まえ、写真や図を交えてわかりやすく残しておこうと思ったわけです。
その一環として、ブログ記事だけでなく動画も作ってYouTubeにアップしてみました。
文字や写真で見るのもいいのですが、動画で見るのはもっと分かりやすいと思ったからです。
記事の最後の方にリンクを貼っておきますので、よろしければ見ていただければ。
(↓壁取付の動画や記事のまとめページも作ってみました)
(↓壁取付の動画や記事のホームページも作ってみました)
最初に・・・なぜ壁にきちんと固定することが必要なのかを考える
地震で生き残るために一番重要なことは、ケガをしないことです。
ケガをしなければ、病院に行くこともないし、病院の混雑も緩和できます。
そして、一番重要なことは、
助けられる側でなく、助ける側になれるということです。
大規模な地震では、広域的に被害が発生するため、助けはすぐにこない可能性が高いのです。
なぜ自宅でいるときに地震でケガをするのでしょうか。
1.家が倒壊する
2.家具が転倒してそれに当たってケガをする
3.割れたガラスでケガをする。
1について
国土交通省のホームページでも「(当時の資料で)現在の耐震基準を満たさない昭和56年以前の建物に被害が集中」というように紹介されています。
昭和57年の建築基準では倒壊の被害が比較的少なかったという資料です。さらに、その後に起きた地震の影響もあり基準(建築基準法)はだんだんと厳しくなっています。
何を言いたいのかというと、新しい家の倒壊は少ないと考えられるということです。
2について
私は、これが、現在の地震対策でとても大事なことであると確信しています。
数年前に阪神大震災の各事例を読んだのですが、もっとメディアに取り上げられてもいいと思っています。
阪神大震災で、建物内でケガをした人の半数が家具の転倒・落下が原因でした。
「住宅における地震被害軽減に関する指針」の公表について : 防災情報のページ - 内閣府
この内閣府の指針にもあるように、国は居住空間の安全の確保をするためには、「住宅の耐震」、「居住空間の安全の確保」が必要と言っているわけです。
お住まいの自治体の防災のページを見ると家具の転倒防止についての広報もされているはずです。
家具の固定は必要なのです。
でも、家具の転倒防止をしようにも、壁の内部の状況がよくわからないと壁に取り付けたビスがズボッと抜けてしまいます。
また、棚などをきちんと壁の下地に取り付けていないと落下してケガをするかもしれません。
そういう意味で、壁にきちんと固定するということは、非常に大事なことです。
まず壁の内部構造を知る
消防庁の資料です。
でも、 この資料では、はっきりいって壁の中の様子がちょっと分からないですね。
ていうかこの資料だけでは分かりません。
家を建築する工法は色々あります。
「2x4」(ツーバイフォー住宅)・木造軸組み工法・木質パネル工法・軽量鉄骨工法・鉄筋コンクリート工法などいろいろな工法があるので、残念ながらひとくくりで「壁の中の構造はこうです」とはいえません。
ここでは木造軸組工法を説明
でも、まあ「木造」といわれる家ならば木造軸組み工法がほとんどなので(一部木質パネル工法もありますが)、それについて書いていきます。
ここで、普通に考えると
「木造なんだから難しいことを考えずに壁に木ビスをとめればいいのでは?」
と思いますよね。
ところが、ビル・公共的な建築物・一般の住宅も、火災のことを考え、壁や天井は不燃材で覆われています。
つまり壁には不燃材の「石膏ボード」を使っているのです。
これは白い粉の石膏を固めて、表面を紙のようなもので覆った板です。不燃性能を持ち、加熱により煙・有毒ガスの発生がないといわれています。
石膏ボードの大きさは多くの場合は1820x910mmです。
この石膏ボードが壁の正体です。
このボードの表面に、仕上材としてきれいな壁紙(クロス)を貼って仕上げているわけです。
つまり、建物を火事から守るため(法令を守るため)に石膏ボードの壁が必要なわけです。
ここで、重要なポイントとしては、石膏ボードはいわゆる建築的な「強度」がないということで、最初からこのボードに何かを固定するということは考えられていないということです。
防火のために用いられる壁材と天井材です。
だから石膏ボードの壁は悪者ではありません。火災防止のために必要なものです。
もし、あなたが家を建てる前で、ある一部分の壁に固定したいものがあるならば、ビスが効くようなんらかの下地などの補強材が必要だと建設業者に伝えておくといいと思います。
(吉野石膏のホームページより)
石膏ボードにビスをとめようとしても、ボロボロと石膏が崩れるだけで固定できません。
ビスは入りますが、抜く方向に力を強く加えると、割と簡単にズボっと抜けます。
石膏ボード用のビスも売っていますが、何か軽いものを吊るぐらいならばいいのですが、建築的な意味の「強度」はないといえます。
強い力が加わるとスボッと抜けてしまいます。
吉野石膏のホームページにわかりやすい絵があります。
吉野石膏 | 工法紹介 | 一般的な壁・天井工法 | 木造壁・天井下地、鋼製壁・天井下地
上記のものは、横方向の胴縁(どうぶち)が無いタイプです。
横方向の胴縁があるタイプと、上記の図のような横方向の胴縁のないタイプの工法があるようですが、どちらが多いのか私はよくわかりません。
胴縁(どうぶち)があるかないか
ちなみに我が家の場合は横方向の胴縁があるタイプで、胴縁のあるタイプの家は下の写真のとおりです。
縦方向の太いものが柱、縦方向の細いものが間柱、横方向に何本もあるのが胴縁
全部の家がこうなっているわけでなく、あくまで一例ととらえてください。
壁の中をイメージする
でも、この後の作業で一番大事な「壁の中をイメージすること」のためには、この写真がとても重要です。
よく見ておいてイメージしておいてください。
つまり、ボードの後ろに隠れている、柱・間柱・胴縁などの下地を狙って木ビスをねじ込むわけです。
ビスの長さはとても重要です。
壁の反対側のボードを貼った時の写真です。
こうして写真を見るとイメージがつかめますよね。
この写真を見ると、木ビスで狙いやすいのは横方向の胴縁だということが分かりますよね。
今度は壁の裏側から見た写真です。
縦が間柱で、横が胴縁です。
胴縁は測ると16mmの厚みがあります。
こうやって写真をみると、壁の表から 胴縁を 探せばいいということがよく分かると思います。
胴縁がないタイプだと、縦方向の間柱や柱を探せばいいですね。
壁の内部は外から見ても分からないという当たり前の事実
ここで言えることは、あらかじめ壁の中の構造をイメージできていなければ、超能力者でもないのに、どこに胴縁や間柱があるかなど外から見ただけで分かるわけがないのです。
整理すると、下地を探す理由は、石膏ボードには木ビスがきかないからです。
当たり前ですが、木製下地にはびっくりするぐらい木ビスが効くので、とてもしっかりと壁に固定できます。
吊るすために軽いものをボードアンカーで石膏ボードに固定するのはまだ大丈夫かもしれませんが、ボードアンカーは引き抜き方向にはとても弱く、石膏ボードがボロボロくずれて抜けてしまいます。
ボードアンカーは便利ですが転倒防止用には全く不適です。
胴縁のある方式の住宅では、胴縁を狙って木ビスを打ちこむことをお勧めします。
理由は、胴縁でも木ビスが十分効くことと、壁ボードから16mm程度離れている間柱が探しにくいからです。
あと、胴縁自体は比較的細いですが、柱・間柱・胴縁・石膏ボードとそれぞれが固定されて壁という一体のものになっているので、総合的には「じょうぶなもの」と考えるからです。
(上の写真に対応したCAD図面を書いてみました)
ただ、細かい理屈をいうと、間柱や柱に重量を持たせたいという気持ちも分かります。
しかし、よほどの重量物を壁に取り付けるのでなければ、そこまでしなくてもいいのではないかと思います。
もうよっぽど心配な人は間柱や柱を狙ってください。そこは自己責任でお願いします。
まあ一番ベストの場所は、間柱や柱と、胴縁の交点ですが、ビスをねじ込みたいところに都合よくこの部分が来るはずがありません。
思っているより長いビスが必要になる
ちなみに、自分で思った以上にビスの長さは必要です。
壁に取り付けたいものの厚みが15mmあるとすると、
15mm + ボードの厚み12.5mm + 胴縁16mm = 43.5mm
さらに、間柱に固定する場合(間柱の中に20mmほどねじ込むとして)
43.5mm + 20mm = 63.5mm
これ、ビスの長さ結構長いですよ。
話は横道にそれますが、石膏ボードの厚みは通常12.5mmです。
ビルや施設などでは、防火区画を石膏ボード壁で施工することも多く、この場合は壁両面に2枚貼りします。つまり12.5mm x 2 =25mmですね。
一戸建てでは流石に2枚貼りはないと思いますが、25mmってかなりの厚みですよ。若い頃に最初現場で見た時はビックリしました。「こんなに壁が分厚いのかっ!」って。
壁の中の木材がイメージできたならば、実践は楽にできると思います。
実際の施工については(その2)で書いたので、よければ読んでください。
(動画を作成してYouTubeにアップしてみました。よければ見てもらえるとうれしいです)
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